第4回 NPOマネジメント講座  報告

 (H17.02.06宮崎市民プラザ)

 「これがNPOの中間支援だ!」



 

  

 

日本人が、ボランティアを意識するきっかけになった阪神淡路大震災。
神戸の地で、被災者の力になる、ボランティア活動を、継続的な事業にする、
災害時に機能するコミュニティをつくる、そんなNPOの中間支援を、10年間実践してきた中村順子さん。

 これからの宮崎のNPOに必要な成功事例、失敗体験を、
「コミュニティサポートセンター神戸」の中村理事長に聞くために、
宮崎のNPO法人が、県の委託事業のNPO講座の特別編として企画。
事業予算は、宮崎のNPOが見つけてきた。
 予算の範囲内でしか事業を考えられない行政と、
地域の課題を解決するために必要な事業を考えるNPOの違いを感じた。

 2月6日に実施されたNPOマネージャー養成講座は、 かなり具体的だった。

 午前中は、NPOマネジメントの概論。 まず、神戸の事例をスライドで紹介。
神戸で、どんなNPOが立ち上がって、地域の課題を解決しているか。

 一人暮らしのお年寄りが集う場所が必要になった。
東灘区で25箇所の医院で「ふれあいサロン」を立ち上げた。
民生委員とNPOが協力した。

 西宮市では、お風呂屋さんの協力で、「湯ったりサロン」をつくった。
これは、介護予防事業に発展している。


   
 

 神戸市が社会福祉協議会のみに委託していた事業に参入した。
オアシスカードというポイント制のカードをつくった。
ポイントがたまると、大衆演劇や温泉に行ける特典がある。
料金の15%を、CS神戸にプールして財源にした。

 公園の緑地を、市民が管理する花壇にした。
車いすでも利用できる高さにして、花壇の下は、生活用水の貯水スペースにした。
災害の時、飲料水は支援物資で届くが、生活用水に困るからだ。

 商店街の空店舗が図書室になっている。
場所を提供しているのは、配食サービスのNPO。
もともとは、ボランティアの炊き出しを担当したおばちゃんたちだった。

 一人暮らしのお年寄りの栄養管理のお弁当を配る。
お金の力を借りないと事業継続は難しいので、
有償ボランティア(最低賃金以下のお金をもらう)に切り替えた。

 その時、無償にこだわる半分のメンバーが離れた。
一方で、お小遣いになるからいいと新しいメンバーが加わった。
今では、全員が70歳以上。年金以外の収入が嬉しい。
商店街の図書室は、NPOの社会貢献事業として続けている。

 郊外の大型団地で、ショッピングセンターが撤退した。
跡地の利用を相談された。
有機野菜を販売するNPOと コミュニティレストランを運営するNPOのタイアップ事業にした。

 指定管理者制度を先取りして、2000年から、文化ホールをCS神戸の直営で運営している。
NPOが参加するのは、管理+情報の受発信のためだ。
管理するだけではなく、新しい価値をつくるのがNPOだ。

 こんなCS神戸の実践事例を、惜しみなく公開している本が「コミュニティ・エンパワーメント」。
「NPO活動に取り組む人々にはすべての道しるべを具体的に書き込んだ、最高のロードマップ」 と掘田力さんが紹介している。
 http://www.cskobe.com/
街が元気だネット事務局も、当日、中村順子さんのサイン入りで購入した。

 NPOの組織運営のポイントは「最後に組織をつくる」こと。
まず、「使命」。解決すべき課題、本来の目的をしっかり押さえる。
事業が行き詰まったら、もう一度、地域のニーズを見直す。

 次に「顧客」。サービスの利用者と提供者、支援者がNPOの顧客になる。

 次に「事業」。誰のために、何を、どこで、どれくらい、いつまでにやるのかを考えて事業化する。

 最後に「組織」。事業を運営するための適正な総会、理事会の運営、事務局スタッフを考える。

 ここで、宮崎のNPOから、組織を先につくったので、組織を維持するための運営になったという報告があった。


            
 

 組織の中核となる機関は「3〜5名の多彩な人材で構成すること」。
2人なら、ケンカしたらつぶれる。
3人なら、組織内で対立しても、1人と2人に分かれるので、2人から再出発が可能。6名以上だとまとまらない。

 そこで求められるのは、
@リーダーシップ、Aマネージメント、Bコーディネート
この3つの機能を3〜5名でやるのがいい。
CS神戸の体験から生まれた法則である。

 多彩な人材で構成するのは、
同種のメンバーで構成された組織が、いつも揉めていたから。
老若男女がいると、違う価値観があるので解決策が見つかる。

 リーダーの資質で大事なのは、最後までリスクマネジメントを引き受ける人。
そんな人が現れた時、NPOがカタチになる。

 午後からは、自分たちのNPOの「強み」「弱み」「機会(追い風)」「脅威」を記入して発表。問題解決の方向性を見つけることを講座の目的にした。

 宮崎のNPOが苦労しているのは、味方づくり。
常勤スタッフの回りに有償ボランティア、その回りに無償ボランティアがいる。
有償ボラ、無償ボラは「必ず入れ替わる」という前提で事業を進める。

 しんどくても、ボランティアが参加できる仕組みをつくらないと、
スタッフが確保できなくなり、NPOはじり貧になる。

 CS神戸は、必ずボランティアを導入することを、リーダーに義務づける。
事業のたびに、ボランティアを募集する。
300枚のチラシを配って、1〜2人の応募がある。

 ボランティアとCS神戸で「合意書」を作成する。
兼務だがボランティアコーディネーターがいる。
2ヶ月に1度、コーディネーターのヒアリングで、軌道修正する。
このフォローを始めてから、ボランティアの定着率が上がった。

 NPOがボランティアを抱える意味は、情報公開のためでもある。
ボランティアが関わらなかったら、スタッフだけなら「会社」になる。

 CS神戸には、いつも2〜3人の起業研修生がいる。
半年の研修でNPOを立ち上げ、プロジェクトリーダーに育っていく。

 スタッフの研修は、年2回、集中してやる。
夏は1泊2日。冬は、午後から夜まで。

 月に1度、夜7時から、事務所が会費千円のバーになる。
毎回、ゲストを呼ぶ。スタッフは、想いを吐き出す。
この場で、事業化のアイデアが出る。

 宮崎には、行政職員とのつきあい方で悩むNPOも多い。
神戸市は、6年前から、NPO企画の職員研修を実施している。
10〜15箇所のNPOを、職員2名づつで体験する。
地域別のつどいを開き、研修に参加した職員とNPOのリーダーが
「協働」について話し合う。

 行政職員には「異動」がつきものなので、「必ず、文書で残す」ことが中村さんのおすすめ。

 講座の参加者から、行政に相談に行くときは、文書にしたメモを持参すると、
担当で止めないで、上に復命するという公務員の習性も明らかにされた。

 これからは、企業人も研修したいと中村さんは言う。
団塊の世代が粗大ゴミにならないようプログラムをつくったけど、参加者が10名しか集まらない。
今度は、社会貢献を意識している企業にアプローチする。
   
 「人は、待ってても来ない!」
NPOから、いろんな接点を求めていく。

 CS神戸は、NPOの情報発信事業も実施していた。神戸市の委託で「NPOデータマップ」をつくった。

ホームページの立ち上げに200万円、サーバー管理は、別に専門会社に委託し、CS神戸には、毎年、50万円の運営費が出る。

 待っていても情報は来ないので、7名の特派員がCS神戸に情報を送る仕組みがあった。

 1万円の券を売ると、5千円がNPOにバックされる優雅なパーティーもある。
赤い羽根の募金は、1%未満しかNPOに回らないので、白いリボンの募金を始めた。
               
 NPO研修ツアーもやっている。
宮崎では、飲んだ時の話でしかなかったことが、神戸では実績になっている。

 「これがNPOの中間支援だ!」と叫びたくなった。


                               (取材:「街・元気」事務局S)

                                        



   
   
 
 
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