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NPOレポート
 
 
 

NPO法人は「社会変革機能」を持つ団体!!
       NPO宮崎文化本舗 副代表理事 

    NPO事業サポートセンター 常務理事 井上 優氏

                                                                                                    


(編集部)新しい官民協働のルール作りでうまく行っている事例がありましたら教えてください。


 愛知県、神奈川県、横浜市、志木市など、協働の指針を策定し、官民一体となった事業展開を行おうとしている自治体は沢山あります。しかし、その指針が現場に降りてきて有効に機能しているかということになると、実態がつかめてないのが実情のようです。


 NPO との協働が結局民需を圧迫するということで、住民反発が起きている事例もあります。本来 NPO の活動は市民自治や住民自治の有効なツールの一つとして認知されていることなのに、本末転倒です。行政側も NPO 側も「協働」の意味を改めて問い直す必要があると思います。

 

 成功事例としては三鷹市の市民協働の取り組みなど、聞いてはいますが、現場レベルでのルール運用などは残念ながら把握してません。ただ、長い時間をかけて住民自治の意識啓発活動や自治会などの活動を行政も一緒に地道に取り組んできた実績の上に成り立っているようには思っています。

 CS 神戸は自治体と委託契約ごとに、協働ルールを適用するように働きかける「積み上げ」方式で協働のルールつくりを模索しています。事実、 CS 神戸との間ではかなり成果が上がってきていると聞いてますが、それが市全体のルールとして定着しつつあるかといえば NO のようです。実力のある NPO 法人に対しての契約形態と他の法人との契約では実態が違うのであればそれはまた別の問題があり、ルールとは言えなくなります。

 

 多くの行政計画や指針が現場と乖離していないか?機能しているのか?有効性はどうなのかなど、きちんと NPO 側が検証していくことが今後必要だと思います。折角制定されたものがキャビネットの肥やしになっていないかをチェックしていくのは市民の責務と言えると思います。


(編集部)NPO やボランティア団体の運営・経営をうまくやっていくためには、どのようなことが重要になると思いますか ?


 全国各地でマネージメント講座が行われていますが、まさしくマネージメントの問題ではないでしょうか?ミッションを持つことは各自で出来ますし、短期間であればこころざしだけで活動できます。しかしその活動を永続的にしかも効率的に行うには組織や経済を抜きには成就しません。そこで活動を行っていくための戦略や戦術が必要になるわけですが、その根底にミッションをきっちりと位置づけることが NPO 活動の基本となります。

 「人、物、金、情報」という財産を効率的に活用していくためには、高度なマネージメント力が必要になります。自分たちの活動を支える理念を自分たちが(理事も事務局もボランティアスタッフも)きちんと共有し、なおかつ支援の輪を広げると言うことは、なかなか難しいものです。徹底的に議論をし、なおかつ行動に結びつける事が必要ですが、議論の集約に手間取りなかなか先に進めない団体もあると思います。責任の所在の問題もあります。そこでリーダーシップが問題になりますが、立教大学の中村陽一教授は NPO のリーダー論の中で、その資質として「ソロバンのはじけるロマンチスト」と評しています。

 活動を続ける上で、自分たちの活動の地平が広がってきていることを感じることがあります。その時は確実にステージが違ってきている時ですが、その際に強力に必要なツールがまさに「そろばん」と「ロマンチシズム=ミッション」ではないかと思います。

 【注: 宮崎県コミュニティビジネス事情 http://www.machi-gennki.net/jijou/top.htm参照】


(編集部)ところで、指定管理者制度についてどう思われますか ?

 指定管理者制度を考えるときに必要なことは自分たちのミッションに合っているかということが先ず必要です。それと同時にこの制度をどのように活用できるかと言う戦略が必要になります。 NPO 法人やボランティア団体というのは目的ではなく、手段です。例えて言えば宮崎から福岡に行くという目的の為に、自動車という道具としての「法人格」という手段を NPO 法で持てたわけですが、車はガソリンがないと動きませんので、そのガソリンを買うためのツールになりえるのが、今回の「指定管理者制度」になるわけです。日本の NPO 法人の6割強が福祉系なのはこのガソリンを買うためのツールとして「介護保険適用事業者」として NPO 法人等(多様なサービス主体の参入を促進)の参入を認めた「介護保険法」があったからです。

 

 言えば「 NPO 法」と「介護保険法」は黎明期の NPO 法人に とって車の両輪であったのですが、今回の指定管理者制度は福祉系 NPO 以外の NPO 法人にとっても、事業を展開する為のもう一つの車輪になりえる画期的な制度と言えます。

 しかし、問題もたくさんあります。ある県(宮崎県ではありません。念のため)の担当者が「採算部門は民間企業に、不採算部門は NPO さんに」と言ったことを聞いたことがあります。

 とんでもない話ですが、このような認識を持っている人がいるのは事実ですし、よく行政と民間の協働促進の先進事例で話題になる県で、収益性の高い事例から自治体に近い団体(言葉を選んでますが・・・)に委託(意識的に参入障壁を設定)していった例もあります。

 先月行われた NPO 関係の全国大会で「 NPO の協働相手として自治体を想定しては自分の首を絞める」という過激な意見も出ました。このような意見の多くは指定管理者制度の委託先の NPO 法人だった事実は皮肉です。折角の新しく、多種の可能性を秘めた制度が自治体側と NPO 側の両方から矮小化されていっているようです。

 

 NPO 法人「フュージョン長池」の富永理事長は、先駆的な指定管理者事業を行っているにもかかわらず、「全国的な傾向としてルール作りや十分な議論が行われていないうちに制度が一人歩きしており時期尚早ではないか」という警鐘をならしています。

 最初に言いましたが、 NPO 側は自分たちの身の丈にあっており、尚かつその活動を行う事によってその地域の生活がより良いものになり得るのかを十分検討する必要があると思います。多くのアウトソーシングは自治体の経費削減がセットとなっているわけですから、シミュレートは慎重に行う事が大前提です。

 また、指定管理者制度は本質的に住民サービスの向上に直結するものでなければならず、経費削減のみの視点から行うべきではないと思いますし、ノウハウの蓄積を地域に残す事も今後の住民自治を考える上では必要だと思います。葡萄酒の新しい皮袋に古い酒をつぐような真似はやめてほしいと思います。


 (編集部)指定管理者制度についてもは、大変難しい問題がありそうですね。先週に引き続き長時間に渡って、お忙しいところどうもありがとうございました。これからも体調に気をつけてご活躍ください。(事務局H)


つぶやき:インタビュー中、ずっとタバコの火がついたままで、いろいろな対応で結構ストレスがたまっていらっしゃるようでした。タバコの吸い過ぎには、十分気をつけてください。 (>。<)y-゚゚゚ゴホッゴホッ

 

 
   
 
 
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