*このレポートは、「メディアミックスによるNPO・ボランティア広報事業」(宮崎県社会福祉協議会委託事業) の一部です。
【お話】五ヶ瀬川流域ネットワーク
理事長 土井裕子さん
川は文化を育む大動脈!夢は天才を育てること

◆きっかけは・・・
 リバーフェスタという川で子どもを遊ばせるイベントを行っていたのですが、その時に「川の様子が昔と変わったな」というのを痛感しました。
 そこで川の環境が変わったのは山の環境が変わったのではないかという仮説を立てて、河川整備基金の助成を受けて調査をして論文を発表しました。
 その結果、山を取り巻く環境、山の産業がとても疲弊しているということを痛感しました。
 そこで、「これはみんなで山とか中山間地域が食べていける、誇りを持って生きていける産業を掘り起こしていかなければいけないね。そういうNPOを作ろうか」という話を協力してくれた人たちとしてたんです。そしたら、私の論文を見た国土交通省の方が注目してくださって、私の川と山に関する思いを評価してくださって、それならと今、私たちの基地になっている河川資料館「リバーパル五ヶ瀬」の管理運営のお話をいただいて。それをきっかけに平成14年3月28日にNPO法人五ヶ瀬川流域ネットワークを設立しました。

カヌースクール
 
カヌースクール
 
Dボート大会
 
干潟
 
干潟での川遊び
 
蛙王と園児
◆主な活動は?
「リバーパル五ヶ瀬」の管理運営を通して、次のような活動を行っています。
 1. 河川の歴史や情報を収集、発信する活動
 2. 川を介して人づくりをする活動
 3. 河川愛護に寄与する活動
 4. 河川を活用した地域興し、産業興し活動
 5. 川や川を取り巻く自然環境の再生復元活動
 6. 川を利用した環境教育活動
 7. 河川研究者、河川生態研究者の受け入れ

 具体的には、次のような活動を行っています。

●カヌースクール
 同じ活動をしている五ヶ瀬川上流のNPOと組んで、五ヶ瀬川・北川でカヌースクールを行っています。ここに集合して、キャンプ用品とかの手配をうちでやったりとか。
 このような活動は補助金をいただいて行っているのですが、同じ所が続けて補助金をもらうのはなかなか難しいのでこっちが外れたときはむこうの補助金で、逆に向こうが外れたときはこちらの補助金でとか。お世話になったりお世話したりと良い連携がとれています。これはゆくゆくはカヌー修学旅行に対応できるように整備を進めようと思っています。

●Dボート大会宮崎
 ダンボールで船を作って川で遊ぼうというイベントです。とにかく今、子どもが川で遊んでいない。だから「川」という自然が読めないんですよ。昔は川をしょっちゅう見ていて、川の状態を「読める」人がいました。
 たとえば河川の氾濫による災害のときなど、普段から川に馴れ親しんでいれば非難するタイミングなど読めるようになる。今の子どもたちは川の恐ろしさを知らない。同時に川の楽しさも知らない。それを知ってもらう一環としてのイベントです。

●絵小町東海さるく(スタート時は「大武・牧さるく」)
 この辺のお祭もだんだん寂れてきてしまったので、それならその時期にあわせて、水辺の町をぶらぶらと歩いて地元の魅力を再発見するイベントとして「元祖・まちさるき」を企画しました。今年で8回目。リバーパル五ヶ瀬周辺の大武、牧町は延岡で最初に栄えた舟運基地。まだ昔の町型が残っていて、すごく面白いんです。これをどうやったら活かせるか、「水辺から文化の里作り」というテーマでワークショップを行いました。
 3つの提案が出ました。ひとつは「アートマップ」。ひとつは「ハザードマップ」。そして町の中を歩く「トレイルツアー」。その中の「アートマップ」は確かにここは面白い場所だけれど、これだけじゃインパクトが弱い。だったら一番とんがったコンテンポラリーアートを入れたらどうか。まずはアーティストに場所を提供して何かやってもらおう「外からアート」。地元も取り組む「内からアート」。地元の人たちも石垣と緑とかの絡みとかに、もっと手をいれたらどうか。またたとえば「蜘蛛アート」、この時期ものすごく大きな蜘蛛の巣が張るので、それを1ヶ所に集めて放したら(笑)アートができるじゃないかという案まで出ました。他にも食のトライアングルやアートアイテムを作ろうとか。みんなで投票してこの案で行こうと準備を始めました。
 そして「大武・牧を歩いてさるこう!水辺から文化の里づくり VOL.3 アーティストがやってくる!」と題して、アーティストの吉田暁子さんをお呼びして、大武地区にある空き家を使ったコンテンポラリーアートを制作していただきました。その時彼女がとても面白がってくれて、次回のアーティストをニューヨークで見つけて紹介してくれて。それから毎年海外のアーティストが来てくれるようになりました。2007年には北京オリンピックに合わせて開催された「中国ビエンナーレ」のキューレターも勤めたパン・シン・レイさんが来てくれました。
 地元の人たちにも呼びかけてスタンプラリーも開催しました。「ここを見て欲しいなあ」という面白そうな場所にスタンプを置いて。今は全部まわると自転車で2時間かかります。町なかにダンボールのドーム(イグル)を作って「街角カフェ」「街角ショップ」「街角ギャラリー」などど位置づけ、その中にスタンプを置いたり、ショップやカフェとして使ってスタンプラリーをしながら食べたり飲んだりできるようにしました。2008年からは「東海さるく」としてエリアを拡大して行っています。

★絵小町東海さるく 〜今年のプログラム
・菜の花の苗を植えよう!
 ※スタンプラリーに参加する人は、10本植えるとスタンプ1個
・まちで遊ぼう!
 「街角ショップ」「街角カフェ」「街角ギャラリー」「街角工房」「スタンプラリー」
・アートサロン
 山本豊津(東京画廊社長)
 テーマは「アート的な価値からものを見直す〜エコロジーとしてのアート アート的感覚の農業」
・その他、お茶会、昔の写真展、ワークショップなど
・今年参加されたアーティスト
 蛙王(フロッグ・キング):香港在住中国人
 ファン シーチェ:台湾出身アーティスト

●クリスマス・リースの販売
 五ヶ瀬川流域のささやかな産業興しの実験です。冬に間伐や枝打ちされる杉の葉で「日之影町背戸山倶楽部」のメンバーが作成したリースを、杉丸太から柱を取った残りの背板で作った木箱に入れて、柚子やカボスを詰めたタイプと、延岡市の精神障害者授産施設カンナ工房の作ったケーキやクッキーの入ったタイプから選べます。
 背戸山(屋敷裏につながる山)で手に入るもの、捨てているものを使って、知恵とアイデアとセンスで商品にしたものです。お小遣い稼ぎくらいにはなっているようで喜んでいただいています。もちろん、買っていただいた方、贈られた方にも大変満足していただいています。そして私たちの収益事業のひとつです。みんなが喜んでもらえる事業です。

◆活動を通してうれしかった事は?
 五ヶ瀬川と山の調査報告と論文を認めてもらって、ここ(リバーパル五ヶ瀬)をまかせてもらったってことは、白羽の矢を当ててもらったようなものです。指定管理なんて言葉が生まれる前のことですから。行政もかなりのリスクが予想されたでしょう。それを押して機会を与えてもらえたのですから。何と言っても活動の拠点となる施設を持っているということは大きな強みです。

◆どんなところにやりがいを感じていますか?
 海外のアーティストの方を呼んだときに、とても喜んでもらえました。「このビレッジ(町)は面白い」って。そして(ここで暮らす)人がとてもあたたかい。日本人がこんなに穏やかで暖かな民族とは思わなかったって。日本には有名な場所がたくさんありますが、「ここの方が良い」ってもどってきちゃう。 
 地域が育んできた生活文化、生活技術、場所の履歴などを丁寧に再構築していくと、色々な可能性が見えてきた感じがしています。
 ここで開催したイベントや体験で、川に親しみを持ってくれる子どもが少し増えたんじゃないかとも思います。学校の行事でここへ来て、次の休みに親に願ってまた連れてきてもらう子どもがいたりという手ごたえを感じます。

◆この活動を通じてどんな事を実現したいですか?
 日本は「遊びと文化と時間の経済軸」が苦手。この3つを支えるのは、現場にいる人なのだけど、その現場にお金が落ちるシステムができていない。
 ものを作っている人はもっと評価されなければいけない。文化や技術を生活の中で評価していくための遊びとか、ゆとりが必要なんです。その部分に「お金を使う」という考え方ができる人が少ない。でもこのゆとりの部分がとっても重要で、たとえば田舎のおじさん・おばさんはとても高い技術を持っています。それは日常的に「ものを作る」ということをやっているから。その高い技術にちょっとした近代的なセンスをプラスすることで、とっても洗練されたしつらえを表現したり、物作りにつなげたりできる。でもそれには、近代的なセンスをプラスできるコーディネーターが必要なんです。そうすると完成度が全然違ってきます。
 中産間地域や過疎地などでは、現状調査はたくさんされています。でも具体的にどういうアクションを興したら良いか、誰も教えてはくれない。
 アクションを興すためには、その地域の技術と近代の消費とをつなぐ優れたコーディネーターが必要なんです。そういう人にお金が払われる仕組みを日本の中でも考えていけば、地域に人材を維持する事が出来るし、もっと楽しいことができると思います。  
 それとこれは私の夢なんですが、ここで育った子どもたちの中からカヌーのオリンピックの選手とノーベル賞の受賞者が出れば良いな、と。天才を生むには3つの条件があります。豊かな自然と、かしずく文化と、役に立たないものを認める大らかさ。特に豊かな自然は絶対条件ですね。そういう「天才が育つ環境」をつくっていけたら良いなあと思います。


◆5年後どんな活動をしていますか?
 エコエネルギー基地の社長!(笑) 町歩きをしていて、冬に全く作物が作られていない農地があることに気付きました。高齢化が原因です。そういう休耕地で、たとえば菜の花を栽培して食用油に利用した後、軽油代替燃料に。バイオエネルギーのプラントを作る、新たな産業の創出を行っていきたいですね。

◆協働事業への考え、取り組みについて
 国や県、地元の延岡市などの行政との協働ももちろんですが、地域住民の皆さんにお手伝いいただいたり、他のNPO団体と組んでやったり、そういうことも協働だと思います。持ちつ持たれつ。良い関係を作る。そうやって楽しく助け合っていければ良いですね。
・「絵小町東海さるく」  
 延岡市の東海東地域で、菜の花を植えながら、地域の古い町並みを自転車でスタンプラリーをするまち作り事業。(2009年度県民との協働事業、アサヒビール芸術文化財団助成事業)
・「東海さるく」  
 舟運基地として栄えた東海東地域に、海外からのアーティストを迎えて、アーティスト・イン・レジデンスを開催しながら、舟運基地としての履歴の残る地域を、自転車でスタンプラリーをして回る。
(2008年度新たな公補助事業)
・「カヌースクール」  
 北川、五ヶ瀬川を活用した、カヌースクールの開催。(様々な補助金、支援事業をつないで、2002年より毎年開催)
・「Dボート大会in宮崎」
 段ボール紙と、ブルーシートを使って、ボートを造り乗って漕いでレースをする。レースが終わったら濡れた段ボールをちぎって「カミネッコン」という段ボール製の植木鉢枠に詰めて、木や花の苗を植えて持ち帰る。   
(2008年度子供の水辺サポートセンター「水夢キッズ賞」受賞、2009年度日本財団助成事業)
・「ふるさとの川」ワークショップ  
 川の写真家鍔山英次先生を迎え、五ヶ瀬川流域の川に関わる活動をしている人たちが集まってのワークショップ。
(2008年度宮崎県河川課の川や海に関する学習及び市民団体間等の情報交換支援事業)
・「第8回全国源流シンポジウムin宮崎五ヶ瀬町」  
 全国持ち回りのシンポジウムを事務局として五ヶ瀬町と協働で開催。
(河川環境管理財団助成事業)
・五ヶ瀬川水回廊マップの作成  
 五ヶ瀬川流域の支流と見所を納めたマップ(五ヶ瀬川ふるさと水回廊倶楽部と協働で作成)
・「川は魅力的か!」講演会in高千穂町  
 九大生による神代川ワークショップとシンポジウム。
(独立行政法人日本学術振興会人文社会科学振興プロジェクト「日本文化の空間学構築」研究グループ、宮崎県河川課の川や海に関する学習及び市民団体間等の情報交換支援事業)
・MORI-MORIネットワークin高千穂・五ヶ瀬川「森・川・海をつなぐ暮らし発見」  
 フォーラムとウオーキング「神々の巡礼」:6つのコースを地元案内人と共に歩く。6つのコースのマップを作成。(MORI-MORIネットワークと協働、(財)国土緑化推進機構助成)

◆最後に一言PRを
 五ヶ瀬川流域の自然と文化を守り育てて、延岡にエコロジータウンをつくるために、この五ヶ瀬川河口の小さな町から発信していきたいと思います。

〜お問い合わせ・連絡先〜

 名 称 特定非営利活動法人 五ヶ瀬川流域ネットワーク
 代表者 土井 裕子(理事長)
 住 所 延岡市牧町河口付近埋立地内 リバーパル五ヶ瀬川
 電 話 0982-42-3005
 URL  http://www.gokasegawa.com/
 
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